ログインボーナスではなく条件を見る、EU KIDS Actのゲーム条項を読む
欧州委員会が9月17日に公表した未成年者のオンライン保護に関する規則案EU KIDS Actは、ゲーム事業者の義務を第15条にまとめている。第15条が適用する第9条2項(b)と(d)の条文と、それに基づく連続ログインボーナスや復帰通知の解釈を、それぞれ別の枝に置いた。数値でまだ定められていない点は、別の枝にまとめた。
ブリーフ全文
欧州委員会は2026年9月17日、未成年者のオンライン保護に関する規則案「EU KIDS Act」を公表した。規則案は、未成年者が決められた時間に再びログインするよう促したり、ログインしなければ特典を失わせたりする設計を、過度な利用を助長する機能と位置づけている。モバイルゲームでよく見られる連続ログインボーナスは、この文言に近い。
誰が対象になるのか#
ゲームを配信するプラットフォームも
対象はソーシャルネットワークサービス、動画共有プラットフォーム、オンラインゲーム、AIコンパニオンと汎用対話型チャットボット、アプリストアだ。オンラインゲームは「ビデオゲームまたはビデオゲームプラットフォーム」と定義されており、個々のゲームだけでなく、ゲームを配信するプラットフォームも含まれる。
まだ法律ではない#
議会と理事会の合意が必要
規則案の文書番号はCOM(2026) 681である。まだ法律ではない。欧州委員会が法案を提出した段階であり、欧州議会とEU理事会が審査と交渉を行い、同じ最終文案に合意して初めて採択される。採択されれば、加盟国が別途国内法を制定する指令ではなく、EU全域に直接適用される規則として施行される。
ゲーム事業者の義務は第15条に#
最低限必要な四つの要素
ゲーム事業者の義務は第15条にまとめられている。ゲーム事業者は、未成年者のプライバシー、安全、セキュリティを高い水準で保護する措置を講じ、少なくとも四つの要素を含めなければならない。一つ目は、強迫的または過度な利用を助長しないことだ。残る三つは、設定、他の利用者との接触、保護者向けツールである。
やめるという決定を揺るがす機能#
第9条2項(b)
第15条は、強迫的な利用を防ぐために第9条1項と第9条2項(b)、(d)を適用する。第9条2項の二つの項目は、ゲーム設計に直接関わる。(b)は、利用をやめようとする未成年者の決定を揺るがす機能であり、例として挙げられているのは、未成年者の活動とは関係なく届く通知だ。
決められた時間、より頻繁なログイン#
第9条2項(d)
(d)は、決められた時間にログインしたり、より頻繁にログインしたりするよう促す機能である。定期的にログインしない場合や、決められた間隔内に戻らなかった場合に受ける不利益や失う特典が、これに含まれる。
保護水準の高い設定を初期値に#
設定、接触、保護者向けツール
未成年者の設定は、プライバシー、セキュリティ、安全の水準が高いものを初期値とする。未成年者と他の利用者との接触も、高い保護水準の下で行われるよう管理しなければならない。保護者向けツールは必ず提供し、13歳未満はそのツールを通じてのみゲームにアクセスできるようにする。
説明部分がゲーム向けに言い換えた内容#
決定を揺るがす機能と報酬
規則案の説明部分も、同じ内容をゲームに即して言い換えている。ゲームは、未成年者が利用をやめると決めたことや、ゲームをしないと決めたことを揺るがす機能、決められた時間やより頻繁なログインを促す機能や報酬に、未成年者をさらしてはならないという内容だ。
ログインボーナスと復帰通知はどこに当たるか#
報酬ではなく、報酬を得る条件
文言が対象としているのは、報酬そのものではなく、報酬を得る条件だ。プレイした分に応じて報酬を与える仕組みは、条文には出てこない。問題になるのは「決められた時間」「より頻繁なログイン」「ログインしなかった場合の損失」である。
大きな影響を受ける三つの設計#
条文に基づく解釈
この基準に照らすと、1日でも欠かすと累積日数が最初に戻る連続ログインボーナス、特定の時間帯だけ利用できるログイン報酬や限定イベント、長くログインしていない利用者に送る「報酬が待っています」のような復帰通知が、大きな影響を受けると考えられる。法解釈は、最終文案と執行当局の判断に左右される。
プッシュ通知は初期設定でオフ#
説明部分に記された通知ルール
規則案は通知も別途扱っている。説明部分には、未成年者のプッシュ通知を初期設定でオフにし、学校の時間帯と主要な睡眠時間帯には送らないようにすると記されている。アカウントのセキュリティに関するものなどの緊急通知と、保護者とのやり取りは例外だ。
接触と創作プラットフォーム#
ゲーム外へ誘い出す接触を防ぐ
第15条2項は、ゲームを通じて未成年者を別のサービスへ誘い出し、接触を始める行為を防ぐ仕組みを求めている。ゲーム内で知り合った人が、外部のメッセージサービスへ移ろうと誘う状況を思い浮かべればよい。
自作ゲームを投稿するプラットフォーム#
第15条3項
利用者が自分でゲームを作って投稿するプラットフォームには、義務がもう一つある。第15条3項は、そうしたプラットフォームに投稿されるゲームもこの規則を守れるよう、ソフトウェアと組織の両面で措置を講じるよう定めている。
アプリストアが年齢レーティングを付ける#
第16条と、今後まとめられるレーティング基準
アプリストアに関する義務は第16条に定められている。アプリごとに年齢レーティングを付ける仕組みを設け、未成年者が年齢に適さないアプリにアクセスしたり、購入したりできないようにしなければならない。年齢レーティングの基準は、今後EUレベルの行動規範を通じて具体化される。規則案は、暴力、性的コンテンツ、ギャンブル、自傷行為だけでなく、アプリ内購入、接触のリスク、中毒性のある設計要素も基準に含めるよう勧めている。
いつから適用されるのか#
発効は官報掲載の20日後
第43条は、官報掲載の20日後に発効し、発効の6か月後から適用すると定めている。一部の条項は発効日から適用され、一部は発効の12か月後から適用される。ただし、これらは最終採択後の日程であり、現時点で暦上の日付に置き換えることはできない。
誰が監督し、何を基準にするのか#
執行主体と行動規範
大規模オンラインプラットフォームは欧州委員会が担当し、それより小規模なプラットフォームとビデオゲームは、加盟国のデジタルサービス調整官が担当する仕組みになっている。ゲーム事業者がEUレベルで承認された行動規範に従えば、第15条の遵守を立証できるとする条項(第15条4項)もある。そのため、業界の自主規約が実際の基準を定める場となり得る。
まだ決まっていないこと#
数値も、シーズンパスも
規則案は、「決められた時間」「より頻繁なログイン」が具体的にどこまでを指すのか、数値で定めていない。週間ミッションやシーズンパスのように期間が決まった報酬の仕組みがどちらに当たるのかも、条文だけでは判断しにくい。欧州議会とEU理事会の交渉で文言が変わる可能性があり、行動規範が公表されるまでは事業者ごとに解釈が分かれる可能性が高い。
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